フランス退屈日記

9月から始まったフランス留学でのあれこれ。旅と生活の記録。

反省文

明日に迫ったギリシア美術の試験に向けて、ここ1週間ずっと一日中オールナイトニッポンを流しながらパソコンとにらめっこする毎日。

 

間違いなくフランスに来てから一番勉強している。

 

...嘘ですごめんなさい。

本当はギリシア美術の試験ではなく、「追試」に向けて勉強している。留学が始まって以来一番勉強しているのは本当だけれど、それはもう後がないだけなんです。背水の陣です。

 

当然フランスではリヨン第3大学にしか留学していないので、このいわゆる追試システムがフランス全土の大学に採用されているのかどうかまでは検証できていないけれど、まあだいたいあるでしょう。

追試とはすなわち "rattrapage"、"la seconde session"とフランス語ではよばれるもので、ギリシア美術の授業が設置されている文学部では基本的に追試を行う形での救済措置が用意されている。

 

日本の大学では確か平均点が一つの評価基準であったような気がするけれど、ここフランスでは、得点が半分を切ると自動的に不合格となる。大体のテストで満点は20点なので、10点をきれば不合格。追試システムのない商学部ではその時点で落単となってしまう。

 

ギリシア美術の本試験が行われたのは2週間前。留学生向けに特別に口頭試験だった。教室に行くと問題の書かれたペラ紙とメモ用紙を渡される。20分間の準備時間が与えられたのちに、そのテーマについて教授の目の前で10分間語らなければならないというスタイル。専門用語のスペリングのみならず発音まで覚えなければならないこの形式が、なぜフランス語を母語としない留学用の試験として採用されてしまったのかは甚だ謎である。

試験問題はそれぞれ違うものが渡されることになっていたようで、私のはギリシア彫刻における男性と女性、というテーマだった。頭になんとか詰め込んだ知識を話してはみたけれど、10分間の語りにはあまりにも不十分で、先生からの追加質問にはなんとか答えられたので期待もしてしまったけれど、最後に先生が見せた切なげな表情は、不合格を確信するのには十分だった。

 

試験が終わって1時間で、追試です、というメールがきた。こういうところばかり仕事が早い。

 

これまで優等生で生きてきた私にとってその事実はややショックだったけれど、フランス語がいやだいやだと逃げ廻って来たのだからもう仕方がない。

仕方がないのだけれど、もう覚悟を決めて勉強するしかないのだけれど、だからこそここで気づいたことを自分のためにメモしておく。日本に帰ってからの授業選択、ひいては進路選択においても覚えておいて損はない気づきだと思う。

 

私、美術に興味ない。アートに興味ない。

 

美術館だらけのフランスに、ヨーロッパにきて、本当はかなり早い段階から感じてはいたことが確信となった。美術館で飾られている絵、街の教会にも見られる様々な建築様式、等々、この9ヶ月くらいの留学生活で幾度も触れて来たものは、本当に私の心の琴線に触れるものではないということがよくわかった。

それらに興味がないと言い切ってしまっては自分が文化的な教養のない人間になってしまう気がしたし、アートに溢れたフランスでの生活を丸ごと否定してしまうような気がしていたからこれまでは認めてこなかった。難しいという言葉を使って、勉強すれば好きになれる、という可能性を残した表現をすることで文化に対する理解のない自分から逃げて来た。

 

けれども、勉強してもなおあまり好きになれない。ギリシアにどんな国家があろうとも、有名な神殿の柱がイオニア式でもドーリア式でも、なんでもいいんです。彫刻の主題が男性でも女性でも、馬でもスフィンクスでも、作る人の好きなように作ったらいいと思う。その背景にあるストーリーに、努力に、工夫に思いを馳せられない自分でごめんなさい。

 

美術館に行くのが嫌いなわけじゃないので、私を美術館にさそおうと思っていた素敵な人がいたら、是非連絡をください。

ニューヨークではMOMAメトロポリタン美術館、パリではルーブルとオルセー、アムステルダムではゴッホ美術館、東京でも上野の美術館でやっていたバベルの塔展や、エッシャー展は楽しかった。

美術館履歴だけ見れば、根っからのアート好きである。が、どれも表面的な美しさを

ちょっと楽しんでいただけでした。楽しかったけど。

 

できるだけ自分の楽しいことをして生きていきたい。